こいのはじめはいつだってたんじゅん。


はじまり


いつもよりも人数が少ない放課後の教室。
残っているのはわたしとゆうこちゃんと野球部連中だけ。
野球部軍団(通称:野軍)はわたしたち女子が教室にいるっていうのに、そんなことはおかまいなしに着替えをしてる。
制服でもなく、体育着でもない。
いつもと違う野球のユニフォーム、深ーくかぶる帽子。

いつもならなんとも思わない野軍なのになんでだろう。
野球のユニフォームに着替えると少しだけ、格好よく見える。
ベルトをする普通のしぐさも、男くさくて渋くて特別に思えてしまう。


そんな野軍を横目に、わたしはちょびっとひなたぼっこ。

「おなかがへっちゃった。」

わたしがボソっとつぶやくとゆうこちゃんは当たり前だよと呆れ顔。
お弁当食べなかったんだもんそりゃあおなか減るよ、と。
ちゃんとお弁当は持ってきた。もちろん、ダイエットなんてしてない(というよりできない)。
いたって健康体。でも、なんだか突然食べたくなくなっちゃう。
そんなことってあるでしょう?

「食べる気がしなかったんだもん」

またわたしがボソっとつぶやくとゆうこちゃんはさらに呆れ顔。
だからってホントに食べないなんて馬鹿だよ体育もあったのに。
ゆうこちゃんは野軍がいるっていうのにもかかわらず大声でぶつぶつわたしに怒ってる。

「そんなに大きな声で言ったらまわりに丸聞こえだよー。」

それでもゆうこちゃんはおかまいなしにぶつぶつ言いつづけてる。
前を見ると、ちょうど前方のほうで着替えてたタカヒロと目が合った。
ほらー絶対タカヒロに聞かれてたよー。すごい見られてるよーすごい驚いた顔してるよーあーあ。


「弁当、食ってないの?」(まじかよ)
「あー、うん」(あーもーゆうこちゃんの声大きいからー)
「え、ほんとに?」(腹減るじゃん)
「あー、うん」(わーすごい吃驚してるよー)
「え、ダイエット?」(する必要ないだろ)
「違う違う、そんなことしないよー」(ダイエットなんてできないよ、わたし食いしん坊だから)
「え、弁当忘れたの?」(誰かに分けてもらえよ)
「あ、いや、忘れてないんだけどなんとなく」(わーすごい見られてるよー)
「…大丈夫?」(…)
「あ、うん。だ、大丈夫」(!)

隣でゆうこちゃんがまだ何か喋ってて、わたしはそれになんとなく相槌をうってたけど。
何を話してたかなんて全然わからない。
だって、タカヒロが部活に走ってく背中がずーっと頭から離れないんだもん。
いつもと違う、野球のユニフォーム、深くかぶる帽子。


タカヒロのびっくりした顔、わたしのことじっと見て言ってくれた「大丈夫?」って言葉。
実はすごーくうれしかった。
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20040313
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