むかーしむかし。
あるくにに、おうじさまとおひめさまがいました。
おうじさまは、とってもやさしくてだれにでもすかれるにんきものでした。
おひめさまは、はずかしがりやでなきむしできがちいさくてなかまはずれにされてました。
でも、おうじさまはおひめさまのことをいつもまもってくれました。
おひめさまはおうじさまのおかげで、すてきなじんせいをおくることができました。


王子様


小さい頃よく読んでいた絵本を読み返す。
あの頃はこんなお話でも面白いと思ってた。
影響を受けて、本当に王子様が現れるものだと信じ込んでいた。
今ではこんな絵本じゃあ満足いかない。物足りない。
王子様なんて現れない。そんなにうまくいくわけがない。


「わたしの王子様はどこにいますかー」

なんて、声に出してつぶやいてみる。
自分で言ってみて馬鹿らしく思い、ふっと笑う。

「ぼくのお姫様はどこにいますかー」

わたしと同じようなやる気の無い声で、そう聞こえた。
(へっぽこヘタレ阿呆馬鹿マヌケアンポンタン)淳也の声だ。


「残念ながら、淳也にはお姫様なんていませーん。」
はあ?(くだらねー)という淳也の声がしたけどわたしはおかまいなしに話を続ける。

淳也は悪い子なので神様が見捨ててしまったのでーす。
フォフォフォ、君にはお姫様なんて与えてあげないぞう、ってね。
でもしょうがないよ、日ごろの行いが悪いもん。
わたしに対して敬意を表さない時点でありえないし、それを神様が怒ってるんだよ。
だから淳也はもうこれから一生お姫様が現れる希望がないのだよー。
寂しい人生だね。わたしが王子様を見つけたとしてもあなたはそれをこっそりと、影からこーっそりと見つめて悪態をつくことしか出来ないのだよ、お分かり?

「そうかよ」


わたしが話した内容を100パーセント無視して彼は雑誌を読み始める。
そんなのどうでもいい、っていう言葉が態度にあらわれていてちょっと引いた。(少しくらいのってくれても良いでしょう)(つーか話に付き合えこのトンチンカン)(そんなんだから神様に見捨てられるんだよ阿呆)


淳也はわたしがそんな風に思ってるなんてことも知らずに、ファッション雑誌に目を向けている。色気づいてんじゃないよ、少年。


「そうかよ、で済まさないでよ。これは淳也の人生に大きくかかわりがあるんだよ。」

だってさ、もうこれからお姫様があらわれないってことだよ?
ってことは伊藤さん家の次男、つまり淳也くん、きみには将来結婚する相手がいないってことだよ。
ほんと、ありえないくらいかわいそう、かわいそうすぎて同情するわ。

「へーそうかよ」


それでもまだ淳也はわたしに一切目もくれず、わたしのベッドに腰かけて雑誌を読んでいる。
わたしが床でなんで淳也がベッドの上にいるんですか。
ていうか、そもそも何でわたしの部屋にいるんですか。(いつの間に!!)


「むかつく」
「はー?」
「淳也むかつく」
「あー、そう」
「…淳也むかつくからわたしの結婚式呼んでやんない」
「あー、そう」


…どこまでにくいんだ、こいつ。
こんなにこーんなにいやなやつがモテる時代なんて本当に怖い世の中になってしまった。


「お前こそ、そんなんで結婚できんの?」

淳也が雑誌から目を離し、わたしのことを見て言ってきた。
体中、顔中、全身を舐めまわすようにじろじろと見られている気がする。

「で、出来るよ。」

今は確かに王子様はいないけどね、淳也と違ってわたしは日ごろから行いが素晴らしいから、神様も見捨てずに相手を用意してくれてるんです。
あーはいはい、と淳也はまた雑誌に目を戻した。


「結婚、出来ない淳也に言われたくないよ」

わたしがボソっと言ったら淳也がジロっとにらんできた。


うるさいんだよ、さっきから。
そう言いながら、淳也は雑誌を閉じてわたしを見据えた。


「お前は贅沢すぎるんだよ」
「な、何が」


「余り者になるはずのお前を俺が将来もらってやるんだからさ、感謝しろよ」


わたしが何も言えずに呆然と見つめていると、淳也は「照れてんなよ」と乾いた声で笑った。
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結婚結婚うるさいなーこれ。20040321
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