今日は、最後の委員会。


第2ボタン




4月から、整備委員としてやってきたけれど、今回でこの面倒な仕事も最後なんだ。そう、思うとなんだか寂しい気もしてくる。高校3年生。卒業の季節。


もう、この学校の生徒でいられる期間は少ない。あと、たったの1週間だけ。



整備委員としての、最後の仕事はゴミ出し。自分のクラスのゴミを出す。それで終わり。ちょっと、納得いかない。最後なのだからもう少し話し合いをすればいいのにと思う。
もう1人の整備委員、陽生くんがわたしにゴミ袋をわたす。陽生くんのほうは、燃えるゴミ。わたしのほうは燃えないゴミ。 並んで歩く。恋人じゃないわたしが陽生くんの隣で歩けるのはこれが最後。そう思うとまた、寂しくなってくる。



「なあ」


突然、陽生くんがわたしのほうを向く。なんとなく、考え事をしている顔。


「制服の第2ボタンとかってさ、今でも欲しがる女子いるの?」
「えっ」
「いまどき、欲しがるやつなんて、いないよなぁ」



確かに、いまどきあんまりいないかもしれない。
…でも、わたしは陽生くんの、第2ボタンが欲しい。もちろん、もらえるはずないけれど。



「でも、好きな人からもらうと、誰でも…嬉しいと…思う...」
「本当?」
「うん」


ふ〜ん…と、陽生くんは自分の第2ボタンを眺めて言った。わたしは、ずっと下を向きっぱなし。


陽生くんは、あげる予定があるんだろうか。 ちょうだいと言われれば、簡単にあげてしまうんだろうか。




「黒田は、好きな人いないのー?」


陽生くんは、ニヤリとした。
ゴミ袋を持つ左手が痛くなってきた。


「そんなの、いない」


できるだけ、普通を装う。興味ないよという声で。
どうしてわたしは、素直じゃないんだろう。


陽生くんの、えーっ…という声。
今日の空は雲の流れがはやくて、あまり綺麗じゃない。 わたしの心もぐじゃぐじゃしていて、綺麗じゃない。


「黒田がいらないって言ったって、俺はあげるからね」


そんなとんでもないことを、自信たっぷりな声を出して陽生くんが言った。


「…え…何、を?」
「何って…第2ボタンだよ?」


だから他の人からもらっちゃ駄目ですよ!

呆然と立ち尽くすわたしを置いて、陽生くんは爽やかに鼻歌なんて歌って先を行く。とりあえず、追いつこうと思ってわたしは走り出した。
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最初載せたときの話から色々変わってる。タイトルも変わったし内容も結構変えてしまったり。もはや原型がないけど懐かしいおはなし。20031004
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