素直な言葉を言えないあなたは、きっと不器用なんだろう。









「おまえ きもいよ」


まじできもいよ。ていうかうざいよ。


さっきから、わたしの目の前にいる剣持くんはそればっかり。
そんなにストレスたまってるの?
誰に対して言ってるの?


不思議に思ってまわりを見渡す。
あれ、誰もいないなあ。


「お前だよ、お前」

え?


「おーまーえ!!」


剣持くんの人差し指がわたしを指している。


「あー、人を指で指しちゃいけないんだよー」


知るか、そんなん。


不機嫌な剣持くん。
あ、わたしに対して怒ってるんだっけ。
なんで?


「お前が、くだらないこと言うから悪いんだよ」
「くだらなくないよ!」
「くだらねえよ」

「剣持くん、わたしを甲子園に連れてって!」



わたしが言うと剣持くんはとたんに、呆れた表情になる。
しつこいんだよお前。
そう言いたそうな顔。



「真顔でくだらねえこと言うんじゃねえよ」




くだらなく、ないのに。



「甲子園…連れてって」



どうして剣持くんは、くだらないって言うんだろう?
わたし、本気なのに。
どうして?





「くだらねえことで泣くんじゃねえよ」



剣持くんの声が困っている。
あ、わたし、泣いてるんだ。




くだらなく、ないもん。



「たっちゃんは、南ちゃんを甲子園に連れてくよ」
「漫画のはなしだろ」
「かっちゃんも、南ちゃんのために頑張るよ」
「死ぬじゃん」
「でも、甲子園、連れてくって約束してたよ」
「どうせ漫画の世界だよ」
「剣持くんは、わたしのこと甲子園に連れてってくれないの?」
「そんなん漫画のようにいくわけねえよ」




怒った声だけど、でも少し優しい。
小さい子供をあやすような、そんな声の剣持くん。



「たっちゃんは、南ちゃんのこと大好きなんだよ」
「知ってるよ」
「かっちゃんも、南ちゃんのこと大好きなんだよ」
「死ぬじゃん」
「南ちゃんは、たっちゃんのこと大好きなんだよ」
「知ってるよ」
「わたしは、剣持くんのこと大好きなんだよ」
「知っ…」



 剣持くんは、わたしのこと大好きじゃないんだよ
 剣持くんは、わたしを甲子園に連れてってくれないんだよ





『甲子園に連れてって』なんて難しいことわかってる。
でも、約束してほしかった。
たっちゃんや、かっちゃんが南ちゃんのために努力したように、
剣持くんもわたしのために、頑張って欲しかった。
たっちゃんや、かっちゃんが南ちゃんを大好きなように、
剣持くんもわたしのこと大好きでいてほしかった。
わがままだって、わかってる。



「美鈴」




無理だよ甲子園なんて。
でも、努力は、する。





剣持くんは少し、照れたような笑顔でわたしに言った。



「お前、くだらねえよほんと」

そのあとすぐ、ニカっと笑って抱きしめられた。
-----------------------------------fin.
わがまますぎるね、女の子。タッチのたっちゃん好き。20031109
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