運命の赤い糸を、信じていますか?


赤い糸。





真っ白い雪がハラハラと落ちてくる。
すごく神秘的なこの季節。
わたしの大好きな、冬。





この季節。
わたしの学校では、毎年、
女の子が好きな相手に手編みのマフラーをプレゼントする。
なんていうちょっと漫画チックなことがはやる。


わたしは、好きな人にマフラーなんてあげられない。
そんな勇気、わたしにはない。





わたせる勇気がある人を。本当に尊敬してしまう。







田嶋くん、もしわたしがマフラーを用意したら。
あなたはもらってくれますか?




寒そうな外で、元気いっぱい走ってる田嶋くん。
息は、真っ白で。



周りの友達は、みんな彼女からもらったマフラーをしてるのに。
田嶋くんだけは、なんにもしていない。



モテないはずがないのに。
あんなにかっこよくって。面白くって。優しくって。


そんな田嶋くんがマフラーしてないなんて。
それは。

好きな人がいるからマフラーをもらっても、つけない。



きっと、そういう理由からなんだろう。
悔しいけれど、幸せになってほしい。
悲しいけれど、田嶋くんには幸せになってほしい。




なんだか、とても悲しくなって。
学校の、放課後の。騒がしい外だというのに。
わたしは、涙を抑えることができなかった。








「どうした?」




そのとき。
とっても心配そうな声と、大好きなあの人がわたしの前に。






「大丈夫?」






サッカーボールがそばに落ちていた。



あぁ、そっか。
遊んでてボールがとんじゃって。
取りに来たんだね。
それで、わたしが泣いてるから。
不思議に思ってきてくれたんだ。優しい田嶋くん。







「ねぇ、寒くない?」





わたしの隣。
そっとわたしの顔を覗き込んで。
すごく困ったような顔をして、田嶋くんは言う。





迷惑かけるつもりはないの。
だから。

もう、戻っていいよ。
わたしは大丈夫。




そう言わなきゃいけないと思っても、
手が届きそうで届かない田嶋くんがそばにいる
そんなことを思うだけで、涙があふれてきて。



何も言い出せない。





「あ、雪雪雪雪!!」






突然、大声で田嶋くんが叫んだと思ったら。
雪が降ってきていた。


「どーりでさみーと思った!」



はしゃいで、楽しそうに笑う田嶋くん。



気を使ってもらって。
なんだか申し訳ない。



「寒いし寒いし!ねぇねぇ、寒くねぇの??」



寒いけれど、でもどうしてか。
田嶋くんといるだけで、なんだか寒さが吹き飛んでしまう。




「やっぱ冬はね、あったかいもんがなきゃ死ぬね。うん。
 やっぱね、マフラーとか欲しいね。うん。
 つーか、彼女からのマフラーとか最高だね。うん」




田嶋くん、マフラーすればいいのに。




「なぁ、きいてる?」

「え?」



わたしのかたを掴んで、田嶋くんはわたしの正面に立った。


「マフラー!待ってるから!!」


「…え?」

突然の言葉に、あまりにも突然の台詞になんと言えばいいのかわからない。




田嶋くんは、わたしの小指と自分の小指をからませた。

「やーくーそーーーーっく!!
 マフラー、待ってる!来年でもいいから!」





そう言って。
そっと耳元で。


「やっぱ、運命の赤い糸に逆らっちゃいけないと思うんだよね、俺。
 だから、マフラー作ってよ?」





顔が真っ赤になって、動揺するわたしを見て、
田嶋くんは満足そうに微笑んだ。

-------------------FIN.
恥ずかしいー!初期の頃のもので。あーもう照れる…!20030513
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