120円のアイスココア。甘くて、やわらかくて優しい味がする。


アイスココア


「いっつもそれで、飽きない?」

授業が始まる2分前。赤堀くんに話し掛けられてびっくりした。
席は隣だけど、必要最低限以上の会話はしたことがない。
のんびりとした雰囲気が、ちょっとだけ素敵だなって思ってる。赤堀康平くん。



「アイスココア。毎日それ」


机に頬杖ついて、ポテチぽりぽり食べながら。
赤堀くんの視線の先には、わたしの手。じゃなくて、アイスココア。甘くておいしい。



「うん、そう、いつも買っちゃう」
「買っちゃうんだ」

そーだね、俺も買う気無くてもなんかポテチ買っちゃうね、おんなじだ。
赤堀くんは、笑いながら言う。赤堀くんは、いつだって幸せそうに笑う。


「それ、アイスココア、おいしいの?」
「うん、北海道産生クリーム使用だもん」

北海道産生クリーム使用のアイスココア。初めて買ったとき、この文字に惹かれてしまった。
それ以来、ずっとずっとお世話になりっぱなし。


「…ほんとだ、北海道産だ」


赤堀くんはアイスココアの缶を見て楽しそうに笑った。
チャイムが、鳴らなければいいのに。
そんな風に思った途端、チャイムはうるさく鳴り響いた。





「北海道産、おいしいね」

次の日、赤堀くんはアイスココアを飲んでいた。北海道産生クリーム使用の、あのアイスココア。
甘くてやわらかくて優しい味のする。赤堀くんみたいな、アイスココア。

「でも甘すぎる」
「赤堀くんみたい」


甘い甘いアイスココアを一口飲み込んで、赤堀くんを見るとやっぱり素敵な笑顔があった。



「俺もそう思う」
「え?」


うまい、でも甘い、でもくせになる、飽きない味。ね、俺みたいでしょ。
冗談なのか、本気なのか、どっちなのかわからない表情でそんなこと言われる。
わたしは、どうすればいいんだろう

また一口アイスココアを飲み込んだ。
甘くてやわらかくて優しくて、くせになる味がした。

赤堀くんを見ると、赤堀くんのなんだかわからない表情が見えて、アイスココアを見ても、赤堀くんみたいでドキドキして。


どうしようもなく、くせになる
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ぼんやりすぎる。20050918
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