高校野球の季節になりました。 ある夏の日のこと。 きゃーっていう黄色い声援があたりを包んだ。 うちの学校のエースピッチャーが三振でアウトをとったからだ。 うん、かっこいいな。 いい球投げるわ、彼。えーと、隣のクラスの橘くん。いい球投げるから橘くんすき。うん。 「やっぱ高校スポーツといったら高校野球だと思う」 「まあ、世間一般的にはね」 「コウタローも野球をやればよかったのに。てかやれ!そんであたしを甲子園へ連れてけ!」 「…まった、無茶なことを言うねお前は」 「だって野球ならあたしもすきだしルールわかるしさあ」 だいたい、なに?剣道って。勝ち負けに気付けないっての。野球とかサッカーとかわかりやすいのにしてくださいって感じ。まじで。ごめんだけど。 などとまあ、剣道部のコウタローに文句を言う。 だって何回みたってルールわかんないからさ、剣道。 かっ飛ばせー、サ・ト・ウ!! 一個下の佐藤くんという子がバッターらしい。ばこんと打っちゃってくれ!飛ばせ、飛ばせ!打っちまえ! 「そんなに言うなら、野球部に彼氏作ればいいじゃん」 わはは、あほな。なんか意味わかんないことをコウタローが言いやがる。あほだ。あほ過ぎるからとりあえず無視しよう。佐藤くんがファールでねばる。 「剣道、無理して見に来る必要もないし、別に。つまんないんでしょ」 佐藤くんが打つ。ショートの横をすり抜ける。コウタローがなんかほざく。 「馬鹿かコウタローは」 「んだよ」 「あたしが見に行ってコウタローは嬉しくないのか、あたしが見に行かないと寂しくないのか!」 ばかやろう。 佐藤くんがヒットとか、次は当たってる四番の橋田くんだとか。嬉しいはずなのに、コウタローのばかが。コウタローのせいであたしは喜べないし。 「コウタローだからでしょ?剣道わかんないけど、見に行くのは、コウタローだからでしょ?なんでそういう意地悪言うかなあ。わかってよ!」 あたしは、コウタローがきらきらする瞬間を、一瞬たりとも見逃したくないんだよ。 ばかばか。もうやだ。野球部に彼氏作ればなんて、無責任でひどすぎる!ばかやろう。 「あ、点入ったけども」 おい。先制したけど。おい、野球、点。無視ですか。 コウタローのあほな声がする。点が入ったとか。知ってるよ、見てるもん。でもコウタローが悪いじゃん、いじけてやる。 「‥来週、俺剣道あるよ」 だからなんだ!ばーかばーか 「野球もこのまま勝てば試合がかぶります」 だからなんだって!あたしいじけてるんだからね! 「剣道と野球かぶるけども。 ‥俺のこと見に来てくれんでしょ?」 だから! 「当たり前じゃん!馬鹿かコウタローは、本当に。」 だってあたしは見逃したくない、コウタローの一瞬一瞬を。 「だよね。知ってるけども。今後とも応援よろしくお願いします。」 コウタローは、あたしより一枚も二枚も上手だ。 ********* 「コウタロー、お疲れ〜い」 「うん」 「わーコウタロー剣道の匂いだ。」 「フローラルでしょ」 「正反対だけど」 でも、コウタローの匂いだからすきなんだ。言わないけどね。調子乗るからね、コウタローは。 「野球部は試合、どうなったかな」 「野球より俺でしょ?」 「コウタローのその余裕な態度がいやだ。あたし野球部に彼氏探す。橘くんみたいな」 「探すのは勝手だけどさ。」 「なに‥?」 「悪いけども離さないよ俺は」 だからずるいのだコウタローは。 --------------- 言い訳ですが久しぶりすぎてもうどうしよう、という。 とはいえこれも3月には仕上がっていたものです。 どんだけ煮詰めようにもわからなすぎて今に至りました。 とりあえず気持ちだけはいっぱいやる気なんです。が。 20080706 |
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