初めから、2



うわさというのは怖いもので、小林先輩と付き合いはじめてからまだ3日目なのに、学校中にわたしと小林先輩の話は広まってしまっていた。


サッチーは後悔しても知らないからねっとよくわからない忠告をしてきたけど、それ以外ではいつもどおりの仲良しな友達だからまあいいや。

サッチーが変に勘違いしていた康平はというと、特に変わったこともなかった。
やっぱサッチーの勝手な勘違いだったなあと安心したような、なんなのか複雑な気持ち。なぜだ。



小林先輩とは、学年も違うしなかなか会えないけど、週に一回ある委員会の日は一緒になれるし一緒に帰れるしそれまで我慢しとこ。

なんだか、心に支えが出来たような、
彼氏って、存在だけでこんなに人生がピンク色になるんだろうか。
なにをしたわけでもなく、どこかへ出かけたわけでもないのに、 ただ居てくれる存在だけで、なんだか花が飛んでるきもちになる。


はやく、会いたいなー。


わたしは毎日、毎秒、ずっとずっと小林先輩のことを考えるようになっていた。
はじめての恋に、浮かれていた。



「香奈、俺のゴール見てた?」
「うん、見たよ、たまたま入れたやつでしょ」
「ちげーよ、俺の走りと動き出しがあったからあの位置にこぼれてきたんだな」
「ぷっ。ばーか」
「来週は香奈も納得のゴール決めてやる!!」


日曜日、康平の入っているチームのサッカーの試合。
毎週日曜日たいてい試合があるから、わたしはなんだかんだ毎週見に来ていた。
康平っていうより、サッカー見るのが好きだからなんだけど。

まあ、一生懸命ボールをおっかけてる康平を見るのは悪くない。


小林先輩との噂が広まってからも、康平は特になんにも変わったところもなく、普通に子供っぽくて普通に朝はいつものように外で待っててくれていた。
康平と二人で朝登校するのも、彼氏が出来た今はまずいのかなあ。
まあ、小林先輩は方向違うし、まだ大丈夫だよね。
大丈夫大丈夫、幼馴染だし。

と、なんだかよくわからないけど納得を無理やりさせながらわたしは歩き出す。
康平はいつもどおり。


「香奈ー」
「んー?」
「なんでもねーっ」
「あっそー」

康平と小林先輩、子供と大人。


「あ、香奈」
「またなんでもないんでしょ」
「じゃなくて、俺変なこと聞いたんだけどさあ」
「変なこと?」

「香奈、小林先輩って人と付き合ってるっていう噂聞いたんだ。何でだろな?おかしいよ。香奈も困ってるよなー」


…あ、

どうしよう。



康平は、自分の言葉にまったく疑いも持たず、わたしと小林先輩の噂は完全な噂で事実じゃないと思っているみたいで。
なんでだか、わたしも「そう、ほんと噂に困ってる」って言いたくなって、どうしようかと思った。


「…えっと、ほんとだよ?それ。その噂」
「…は?どゆこと?」
「わたし、小林先輩と、付き合ってる」




康平に告げてしまったこと。
康平はそのあと、なんで?って呟いてしゃべらなくなってしまったこと。
小林先輩のこと。


なんとなく、どれもこれも心に重たくずーーーんってふってきた。


サッチーにはなんだかこのことを伝えられなくて、
康平はその後わたしと関わらないようにしていて、
だからわたしも、何も考えないようにした。


彼氏ができて嬉しいはずなのに、もやもやした気持ち。
小林先輩に早く会ってすきだって気持ちを確かめたい。
あのとき感じたときめきとか、好きってきもちが本物だって、わたしは自分に言い聞かせていた。



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つづく
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