take it easy 4話 「おれはかわいそうだ」 ぷらぷらと商店街をぶらつきながら健太が言う。 あたしはそれをもちろん無視する。 ひでえ。気の毒な俺。かわいそうな俺。 とかなんとかぶつぶつつぶやく隣の高校生。 「あたしだって、かわいそうだよ」 そう言うと、健太は顔を歪めて「それを言うかよ」とため息をついた。 修学旅行も終わって、ついに高校3年生へと突き進むこの時期。 でもまだ3年生にはなってないから。 ぷらぷらしててもまあいいよねーって。 そんな感じで商店街。 健太がさっきからぶつぶつ言ってるのは、言わずもがなあたしのせいなんだけど。 まあ、そこは触れたらヤケドするってわかるから何にも触れない。徹底して知らん振り。 って、本当に徹底して無視をしてたら、健太が見るからにへこんでしまった。 「罪悪感に襲われた」ってへなへなしてる。 なんていうか、やっぱそれもあたしのせいだ。 付き合っては、いない。 でも、こうやってよく遊ぶってまではいかないけど、よく会ったりする。 それは、あたしが望んでるものではなくて、すべて健太の。みたいな。 そんな風に健太は思ってる。 実際、あの再会の日からの過程は健太になんか巻き込まれたっていうか、健太がなんかいろいろ進めてきて、そして今のこの関係に至ったりしてる。 だけどそれはもちろん、無理やりでもなんでもない。 あたしは、健太といるのが楽しいからこうやって会ったりするし。 でも、健太はあたしが無理やり健太と会ってるとかそんな風に思ってる。 だから「あたしだって、かわいそうだよ」って言った冗談を、冗談に受け取ってくれないし。 罪悪感に襲われたっていうのも、きっとそれを気にしてのことだと思う。 それを否定しないあたしは意地悪だけど。 そこに触れたら、もう戻れない。 あたしはまだ、わからないよ。 「何へこんでんのー」 「俺は罪悪感で出来ているのよ、まじで」 「気にすんな!仕方ない、チョコ買いますよ」 バレンタインのチョコレート、あげなかったら「おれはかわいそうだ」ってへこんで。 あたしが意地悪な冗談言ったら、本当に気にして罪悪感でつぶされそうになって。 「違うんだよ、バレンタインっつうのはチョコじゃねえの。気持ち」 「気にしない気にしない」 まだ罪悪感から抜け出せないへなへなな健太を引っ張り歩いて。 1日遅れのバレンタインチョコを買いに行く。 ------------------------ い、今更なネタを!20060503 |
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