小谷と清水 電話 「なに?」 「あ、ぼくコタニ」 「知ってるから。画面に表示されるから」 「最近の携帯電話といふものは本当にすごいと俺は思う。なぜって電話をとる前から相手が誰かを知ることができるからだ。すばらしすぎる。小谷は感銘を受けました」 「うざい。で、何」 「ああ、ほら、お前空見上げてごらん」 「やだ、今家だし」 「ベランダ及びトイレ及び玄関からちょっとのぞこう」 「やだ、今座ったばっかなの、動きたくない」 「まあいい。雨が降りそうなんだ」 「あ、そうなんだ、へー」 「そこで折り入ってご相談が」 「なに?」 「俺は今、友人、まあ詳しく言うとタローの家に行く途中だった。しかしこの空模様。やめることにした。でも家につく前に雨にやられるんだ、これは絶対に」 「あ、そ。気をつけて。じゃ」 「待て待て。ぼくこたにはお前の家に向かっています」 「なにゆえ」 「現在地から、自宅より清水の家が近いからです」 「嫌です。小谷を家にあげたら親が悲しみます」 「なんですかそれは」 「小谷のような気持ち悪いのを彼氏だと勘違いされ、悲しまれるということです」 「うわあ、それってばごもっとも」 「来ても家に入れないよ、ばいばい」 「わ、おい、わ。ほんとに切りやがった。くそ」 あれ、先ほどまでの雲はどこへやら。 空は憎たらしいほど晴れていた。 小谷はそんな空を、まぶしそうに見上げていた。 哀愁がただよっていた。(ナレーションBY小谷) ----- 清水の家に行こう作戦大失敗 |
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