せっかく、頑張ったのに。
せっかく、勇気出したのに、なんだよ。
ラブレター
キ ミ の こ と 、 好 き な ん だ 。
・・・・・・は?!
朝、わたしの目に飛び込んできたのはそんな紙切れ。
一言だけで、名前も宛先も何もない、紙切れ。
それは、間違いなくわたしの下駄箱に入っていて、
真っ黒いサインペンで大きく書いてあった。
い た ず ら
だと思う。だって、いまどきこんなベタな展開。
なかなかないと思う。
しばらく、それを見つめ、ぐしゃっと丸めた。
ば か み た い 、 こ ん な い た ず ら 。
「うわ」
お前、何やってんの。
うんざりした気分をさらにブルーにさせる大きな声。
「べつに」
「今、確実にあれだろ」
あれって何。
「ラブレターっつーもんじゃないの!?」
ああ、そうみたいね。
いたずらの。
「普通、あんなくしゃくしゃにしちゃう?」
「しちゃった」
丸めた手のひらの力を抜いて、くしゃくしゃになった紙を見る。
「いや、しちゃったじゃなくてさ」
だって。
むかついたんだもん。
「あーあ、こんなにしちゃって。相手の気持ちも考えろよな」
いたずらじゃん。だって。
「名前もないし、宛先ないし、いたずらでしょ」
「はぁ?」
「ほしい?」
「は?!」
あげる、いらなーい。
そう言って、紙切れを山口に投げる。
「ああ、1時間目体育じゃん、着替えなきゃ」
思い出して、スタスタと教室に。
向かおうとした。
そのとき。
「あーあせっかく書いたのに」
小さな声と、大きなため息。
聞こえちゃったよ、山口ごめん。
放課後の、下駄箱の中に紙切れ一つ。
しょうがないから、山口にあげる。
あたしも、好きだよ。
一言だけを。
----------------------------------------------------FIN.
結果オーライおめでとう。的な。20030719
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