ナイン ホームランを放った背番号９の男の人は、スタンドにいるわたしを見て、にやりと笑った。 ような気がした。 まさか。 あんなとおいとこから、顔がわかるはずもなく、ニヤリと笑う顔もわかんないし、わたしのただの思い込みであることは確かなわけで。 でもわたしはそんなことからあの、名前も知らない背番号９の男の人を好きになってしまったんだから仕方ない。 ああ仕方ない。 そんでもってあの背番号９の人がわたしの後ろの席の山本くんだったってことに気づいたのがおとといだったっていう、そんな鈍感な話がこれ。そう気づいてしまってからはもう、山本くんが気になって仕方ない。さてどうしよう、これは何か話し掛けるべきなのかな？？ 兄にきいたところ、背番号９はライトの人らしい。えーと、ライトって、どこ？右側なのかな、うーん、えー、と、よく、わからない。 （…ありえないけど…まあいいか） 20040830

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