数学


「うわ、何これわかんねえ」


さっきから、ちょこちょこ山本くんの声がする。

数学のこの時間、自習になってプリントが2枚わたされた。
でも、真面目にやってる人は少なくてみんなケラケラ笑っていて騒がしい。
そんな中、うしろの席の山本くんは、「はあ?」「何これ習ってねぇし」「あーもーやだ」とかいいながらもまじめにプリントと向き合ってる模様。


「ここどうやんの?」「教えてよ」「…なんでそうなんの?」「え、なんでその数字出んの?」

山本くんは、どうやらすっごく数学が苦手みたいで1人でパニクって、隣の席とか周りに聞いてそれでも尚わかんなくてとても困ってる。


野球部ライトの、山本くん。


山本くんの声をいちいち気にしながら、窓の外を眺めてみた。
暑そうだなあ、野球部は練習大変だろうなあ。
なんてことをぼんやり思ってると、背中をつんつんとつつかれた。


「ねえ、数学得意?」


山本くんがわたしに聞いた。


「苦手、じゃない、かもしれない」
「おっけー、それでいいよ、ここ教えて」


ホームランを打った人。背番号9番の人。わたしの後ろの席の人。
前後の席なのに全然喋ったこと無かった人。
なんとなく最近気になっちゃってた人。
山本くん。
ライトの、山本くん。



この気持ち。

どうしよう、わたしやっぱり

恋してる。

(勝手な思い込みから勝手に意識して勝手に惚れる。やっぱ最初からどっかに気になってる気持ちがあったんだと思う。だってそうじゃないと唐突すぎる。自分で書いときながらそう思う)20050718
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