スリーピングタイム!!


コール音。
山内タツヒロを呼び出す音。
1回、2回、3回、4回…山内タツヒロはいつだって5回目のコール音で出るんだ。
ほーらやっぱり、5回目。


「はろーはろー、お元気?ハローハロー、きこえてますか。」

わたしの声に、山内タツヒロは不機嫌な声で返事をする。
ああ?聞こえてるよ当たり前だろうが、と。
たぶん、ねおき。

ごめんよ、わかってたんだ。
山内タツヒロはちょうど今の時間、居眠りタイムだってことくらい。ただ、どうしても伝えたいこと、違う、話したいことがあって止まらなかったんだ。わかっておくれ、寛大な心の持ち主、そして器の大きな山内タツヒロくんよ!!


「ねえ、山内タツヒロよ、わたしきみに話したいこと出来てしまってつい電話してしまったのさ、さっき、本当に突発的に浮かんじゃって、もう、どうにもなんないわけ。」

ああ、っていう、返事なのか、あくびなのかよくわからない山内タツヒロの声を聞いて、わたしは勝手に返事だと思い込んで、話を続けることにする。


「知ってるかい、山内タツヒロくん。わたしはさっき気づいたのだよ。人は、何か大事なものを手に入れるためには大事なものを犠牲にしなきゃいけないってことに。安定した結婚を本気で手に入れたいのなら、愛を捨てねばならぬのだよ。その代わり、愛を選ぶならば安定した結婚はきっと捨てなきゃならないと思うのだよ。そんな選択を迫られたときわたしは迷わず結婚を選ぶね。とりあえず、安定してないとこの世界、やってけないよ物騒だからね。ところでどうだい。きみは。山内タツヒロくんの意見が聞きたいと思ってさ。」


3秒くらいの沈黙のあと、山内タツヒロは静かに、眠そうな声で、ほんとうにどうでもいいよっていう声で言った。(しかもあくびまじりさ、ありえない)


『とりあえずおまえはー、あーねむ…、えーと、おれがーいるかぎりー、あいと、けっこん、どっちもとれる、わけ。だから、しんぱいすんな、じゃ。寝るから』


山内タツヒロは、やたら期待させるようなことを、平然と、髪切ったよみたいなノリで、言うだけ言って、わたしの返事をきかずにガチャリと切ってしまった。
じゃあ、山内タツヒロがいなくなったらわたしはどちらを選べばいいのさ、と、また一つ大きな疑問が浮かんだから、明日もまたこの時間電話をしてみることにしよう。



(20040831//フルネームで呼ぶことしか出来なくて照れて口調変わっちゃって、山内タツヒロは余裕で…。そんなふたり)
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