はる、なつ、あき、ふゆ、どれが好き? しゅんかしゅうとう。 「おれは、春が好き」 春はあったかい。優しい気持ちになれる。ふわふわした気分にもなれる。だから、好き。 ただ、単純に。好きな季節を聞かれただけで、俺もただ、単純に好きな季節を答えただけ。それだけ。 それだけだったのに。 八月の夕方は、少しだけ切ない。さっきまでまぶしかった空も今じゃオレンジ色でなんだか寂しい。 けれど、こうやってのんびり散歩するだけでも額にじわっと汗がわくから、まだ夏なんだと実感できる。 「俊介は、春ちゃんが好きなんだ」 いつも一緒にいる、だけど付き合ってるわけじゃない。そんな微妙な関係の沙耶香が突然、意味のわからないことを言った。 「ん?」 ―俊介は、春ちゃんが好きなんだ なんのこと? 「さっき、聞こえちゃった」 俊介が、俺は春が好きって言ったところ。 うつむいて、オレンジ色にそまった空に照らされて、沙耶香も少しオレンジがかっていた。少しだけ、悲しそうな声。 「春…ちゃん?」 沙耶香は、『春』にちゃんづけするの? 「春ちゃん、かわいいからね…そうなんだ」 夏は、夏ちゃん?それもまた、変だろう。とゆうか、季節にかわいいもくそもないだろう。 「じゃあ、お前は、はる、なつ、あき、ふゆ、どれが好きなんだよ」 わたしは秋ちゃんが好き。なんて明るく言ったら、馬鹿って言って(かるーく)殴ってやろう。季節にちゃんづけなんてするこの、特別馬鹿な女に。 「え?!」 「ん?」 はる・なつ・あき・ふゆ? 「やっぱ、春がいいだろ?」 そのとたん、なぜだか知らないけど沙耶香は急に顔を赤くした。 ただ、それはオレンジ色の空のせいなのかどうかわからないけれど。 沙耶香は、少しだけ恥ずかしそうに、赤く染まった顔で笑った。 「なんだぁ」 「ん?」 「わたしも春が大好きだよ。」 やっぱり、な。 そういう俺の額には少しだけ汗がにじみでた。 まだまだ、夏は終わらない。 -------------------------------------FIN. ちょっと気持ち悪い。20030816 |
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