甘酸っぱい恋が始まります 前の席のたけしくん なんとなくたけしはわたしのことが好きなんだってわかってから3日目。 別に、好きとか嫌いとかそんなような会話は1度もしてないけど、冗談っぽく、プリント配るときに「わたしのこといつも見てるでしょ」って言ったらたけしが真面目な顔して「うん」って言った。なんてね、冗談だよ。そんな言葉もなくって目も離せなくて、(たけしってこんなにくっきり二重だったんだ、いいな)なんてくだらないこと考えてたらひろしが来てそこで終わり。 (でもあのときひろしが来てなかったらキスしてたかもね!)なんてちょっと思ってひろしの馬鹿って心で5回くらい言った。 でもそのあとひろし来てくれてありがとうって100回言った。 そんなことがあったからなんだか恥ずかしくなっちゃっていつもはたけしばっかり見てるのに今日はひろしばっかり見ちゃってる。ひろしは面白い顔してる。あれ、今人気のお笑い芸人の誰かに似てる。 面白いでしょ。確かその芸人さんの名前もなんとかひろしだったっけ、なんて偶然! 『授業参観のお知らせ』 ぼーっとひろしを眺めてたら前からプリントが配られてきた。 うわあ、来週授業参観だって!面倒くさいなあ、寝れないよう。 ぱっと前を向いたら3日前にうらやましいなって思ったたけしのくっきり二重。 うわあ〜そういえばたけし、わたしの前の席だったっけ。 ちょっと3日前の出来事を思い出してたら緊張してきちゃった。 目をそらしたいのにそらせない、ひろしのとこに逃げたいけど逃げれない(だってわざとらしすぎる)、下を向きたいけどきっと無理、どうしよう。 前髪、おかしかったらどうしよう。こんなに目があってると恥ずかしいよ、たけし! 「あのさ…。プリント、後ろ、まわしてよ」 …あ…そっか。プリント、だよね、うんそうだよね。 ちょっと目が長いこと合ったからどきどきしちゃったじゃんか。 あーあ、ほっとした。(けど、ちょっとがっかりしたっていうのは秘密ね) 「あ、うん、ごめん。」 うしろの席のミヤビちゃんにまわす。(ミヤビちゃんかわいいの!) 『授業参観のお知らせ』っていう紙と『タオル集めにご協力ください』って紙。 ミヤビちゃんのおっきな目から自分の机に目をうつす。 あれ、なんだろこの紙。また後ろにまわすのかな。 そう思ったけど1枚しかない、なんだろう。 しかも丁寧に4つ折りされてる、なんだろう。 独特のくせ字が見えてきた。青いボールペン、雑に書かれた何度も見たことのある字。たけしの字。 ”好き(たぶん)” 雑な字。汚い字。たったこれだけ。たけしの字。 (うわあ、たけし、何これ !!) 恥ずかしがりやさんだなあ。口で伝えてくれればいいのに。ていうか、たぶんって何?ひどいよ、たけし!でも、うれしいな。 こみあげてくる笑いをおさえきれなくて、笑いながら何回も読み返す。 手とかふるえたのかな、何回かかきなおしたのかな。 そう思うとまた笑っちゃう。笑いながら返事をかいて、笑いながらたけしの机に投げた。 ありがとうって書いた紙。 ----------------------------------------fin. とっても不器用な二人の恋のはじまり。まいちゃんは本当は『たけし』なんて呼び捨てしたことないです。心の中ではいつも言ってるけど、実際は呼び捨てなんて出来ない恥ずかしがりやさんです。 |
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