おひさま


あの日、たけしに手紙もらった日からもなーんにもなくて、前となんにも変わらなくて、前と同じでたけしは授業中よく居眠りしてるし、こっそりファンタジーな冒険小説を読んでばれて怒られてばかりいる。


そりゃ、突然優しくされたりしたらわたしだってびっくりしちゃうと思う。
でも、なーんにも話し掛けてくれないってのも、それはそれでなんかやだ。
だって、あの手紙は本当にあったことで、でもわたしはそれをたけしに返しちゃったから、もう証拠なんてなくってわたし一人で舞い上がってるだけなのかもしれない。


そんなことを思いながら暑い暑いおひさまの下、わたしは必死にマラソンしてる。
今は体育で地獄のマラソン中。気分はぐうたら最低ぐったりなのに、こんな風にたけしのこと考えちゃうなんておかしいなーなんて思ったりしつつ、ああもしかしたらわたし、たけしじゃなくて恋に恋してるのかもなんて思ったり。

でもやっぱり目はたけしを探してる。
あーあ、こうやってきょろきょろする分疲労が増えるのになあ〜。



地獄のマラソンが終わって汗だくのまんま教室へ。
前にはたけしがいるんだから、あんまり汗臭いのも嫌だなぁって思うけど、やっぱりたけしはこっちを向いてくれないだろうから変わらないかなあ。あーあ。



「飲まない?」
下を向いているときに誰かの声。誰かじゃない、たけしの声。
「え?」
「暑そうだったし・・マラソン…とか」
「あ…うんありがと…」

びっくりした。たけし、わたしの走ってるとこ見たんだ。
見られてたんだ。うそ、やだ、どうしよう、見てるなんて思わないもん。
…でも、たけしは、わたしをわざわざ探してみてくれたのかなあ。
だったら、ちょっと嬉しいなあ。


自分でお茶は持ってたけど、たけしのくれたお茶を飲む。
だってたけしがくれたんだもん。今までで1番おいしくて嬉しいお茶だったよ。


次の体育のマラソンも、おひさまがぎんぎらに照ってる中、たけしのことを思いつつ、がんばろっかな。
わたしは恋に恋してるんじゃないや、やっぱりたけしが好きなんだ。


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