プレゼント


今日は何の日?
ねえ、たけし、知ってる?
今日はわたしの誕生日だよ。


なーんて言ったって、たけしは知ってるはずがない。ていうかわたしの友達だって知らない。(だって誰にも言ってない)

だいたい、たけしとわたしは実際何も特別な関係じゃない。
あの日、たけしは確実にわたしのこと好きだって手紙くれたのに。お返事だってありがとうって書いたのに。
それなのにたけしはそれから変に意識しすぎてるのか、全然話し掛けてこない。
わたしは、前みたいに、って言っても前いっぱい喋ってたっていうわけじゃないけど、でも今よりもっと普通に話せてた頃に戻りたいよ。


「なあ、まい」
「なにー」

わたしをまいなんて呼ぶ男子はひとりだけ。
ひろしだけ。お笑い芸人の誰かにちょっと雰囲気が似てるひろしだけ。
ほんとはたけしにも呼んでほしいのに。


「今日、たけし部活ないってさ」
「へえ」
「一緒帰れば?」
「…なんで?!」
「なんでってお前ら…付き合ってんじゃないの?」
「……はあ?!」
「だって両想いでしょ」
「だ、だ、だからってつ、付き合うってことになるの?」
「…普通そうでしょ」




ひろしってやつは、果てしなくおせっかいだと思う。
ていうか、ありがたいけどありがたくないよ、ひろし。
どどど、どうすればいいの?!

ひろしのせいで放課後残されたわたしとたけし(とひろし)。
ひろしがいらない世話焼いて「おまえら一緒に帰りなよ、俺用事思い出した」とか言い出して結局一緒に帰ることになってしまったわたしとたけし。
おまけにさっきひろしが言ってたつ、付き合うとかなんとか。
わたしの心臓はもう爆発寸前!ねえどうすればいいの。


無言で歩くたけし。わたしはそのななめ後ろ。
たけしって、わたしのことほんとは好きじゃないのかなあ。
好きじゃないから話しかけないのかな。わたしはたけしのこと…。

「ねえ、あの…ひろしが言ってた。けど、」
「うん」
「あの、わたし、と…」
「うん」
「わ、わたしたちってつ、付き合ってるの?」
「え」


たけしが立ち止まる。わたしも思わず立ち止まる。
たけしの目、わたしを見てる。

「あ、あの、ひろしがなんか、普通、は付き合うとかなんとか言って」
「うん」
「あの、嫌なら、いいよ。」
「え」
「わたしのこと、別に好きじゃないんでしょ、付き合うのも嫌でしょ」


恥ずかしさと、悲しさで目の前がぼやーってする。
たけしはずるいよ。わたしに期待させてばかりで、ずるいずるい。
自分は、うんとか、えとかしか返事してくれなくて、わたしばっかり喋っててずるいずるい。
わたしは恥ずかしさでたけしの顔見れないのに、たけしはきっと真っ赤なわたしの顔見ててずるいずるい。



「嫌、じゃないし、好きじゃなくない…よ」



たけしが焦ったようにわたしの顔を覗き込む。
やっぱりたけしはくっきり二重。ぼやけた視界でも、やっぱりきれいなくっきり二重。
うらやましい。
ずるいずるい、くっきり二重でずるいのに、たった一言でこんなに嬉しくさせるなんてずるいよ、卑怯だよたけし。


「わたし、も、だよ。」

小さく呟いた声、たけしに聞こえたのかな。
聞こえてたら、恥ずかしいな。


「じゃあ、…付き合う?」

たけしの小さな声にわたしはこっくりと首を縦にふった。
ねえたけし、今日は何の日?
わたしの誕生日だけど、付き合い始めの記念日にもなったよ。
誕生日プレゼントは、何もいらないから来年もたけしの名前、心に刻んでいたいよ。
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ちょっとありえない…!でも一応進展です。たけしくんはずるいです。でもまいちゃんもある意味ずるいです。20041114


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